Vol.2 伝統菓子で新年を祝う

歳時記

由緒正しい正月菓子、「花びら餅」

日本人にもっともなじみ深い年中行事・お正月。年末が近づくと、和菓子店の店先には、縁起物をかたどったお菓子がずらりと登場します。なかでも、ちょっと不思議な存在感で目を引くのが「花びら餅」。なぜお菓子なのにごぼうが包まれているの? 小豆餡ではなく味噌餡の理由は? 謎いっぱいの「花びら餅」の歴史を紐解いてみましょう。

紫式部も食べた? 宮中の行事食

餅や求肥に、白味噌餡、ごぼうの甘露煮を挟んだ「花びら餅」。今でこそ町なかの和菓子店で買える存在ですが、元は宮中ゆかりの行事食に由来します。原型とされるのは、『源氏物語』にも登場する新年行事、“歯固め”のお供えもの。餅や塩漬けの鮎、根菜など歯ごたえのあるものを食べることで、丈夫な歯をもち健康長寿を願うという儀式でした。このお供えものが、時代とともに変化。平たい丸餅に、赤い菱餅、京都生まれの白味噌、鮎の代わりのごぼうを挟んだ「菱葩(ひしはなびら)」が生まれます。その後、明治時代になると、京都の老舗菓子店が「菱葩」を甘くした茶席用和菓子として「花びら餅」を考案。新年最初の茶会に欠かせないお菓子として広まりました。

平安に遡る、お雑煮との深い関係

正月料理といえばお雑煮が思い浮かびますが、一見共通点のなさそうな「花びら餅」とお雑煮には、実は深いかかわりがあります。お雑煮を構成するのは、餅と味噌、そしてごぼうなどの野菜。もうお気づきでしょうか? お雑煮も元をたどると「歯固め」の儀式に行きつきます。新年に参内した公家たちが、天皇から別名「包み雑煮」とも呼ばれた「菱葩」を賜り、その際、固くなった餅を煮て食べたことがお雑煮の起源とか。いってみれば「花びら餅」とお雑煮は、同じルーツを持つ親戚筋! ユニークな形状や複雑な構成ゆえ、和菓子界で異彩を放つ「花びら餅」ですが、由来を知ればそれも納得。悠久の都に思いを馳せながら味わえば、おいしさもひとしおです。

“お正月はやっぱり餅”の理由とは

新年に食べるものといえば、餅そのものを連想する人も多いはず。そもそも白い丸餅を重ねた鏡餅は、お正月の象徴的存在です。古来より、餅は日本人にとって特別な存在でした。米には「稲魂(いなだま)」という神聖な力があるとされ、その米をついて作る餅には、強い生命力が宿るとされたのです。一年の始まりに、感謝を込めて餅を神様へ捧げる。そしてお下がりをいただき、幸せや健康長寿、子孫繁栄を願う。元来、それこそが日本のお正月の過ごし方なのです。「花びら餅」に雑煮、焼き餅にお汁粉……いつもより餅を食べる機会がぐんと増える新年。ときには、昔から餅に込められてきた祈りや願いに、思い馳せるのもいいかもしれません。

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