伝統と革新の融合で 美味しさと新たな感動を提案

七里香

早稲田大学正面から続く、ケヤキ並木。新宿区にありながらも、やさしい木漏れ日が都会の喧騒を忘れさせてくれる、静かで落ち着いたエリアだ。通りには個性的なショップや飲食店が点在。そのなかに、2017年、nanarica~七里香~は誕生した。

七里先、千里先まで香りが届くといわれる「沈丁花」の花のように、七里先まで和菓子の美味しさが届きますように。そんな願いを込めて名付けられた七里香は、「新しくていつも美味しい和菓子を」をテーマに、伝統と革新が融合したニューノーマルな和菓子作りに取り組む。七里香が目指す、“新しさ”とは―

代に合った美味しさを追求

七里香の立ち上げには、天保5年より続いた老舗和菓子店で経験を積んだ面々が中心となって参画。いいものを作る技術と矜持にかけては、ひとかたならぬものがある。「素材にこだわり、美味しい和菓子を作るのは大前提。私たちには、これまで各々が携わってきた、それ以上のものを手掛けたいという想いがあります」と語るのは、支配人の石川一弥さん。

そのひとつが、時代に合った美味しさの追求だ。健康や本物志向の高まりから繊細な味が好まれる今の風潮に合わせ、七里香の和菓子は全体的に甘さは控え目。「小さなお子さんからご高齢者、また健康や美容を気にされる方にも安心して楽しんでほしい」。そんな想いから、やさしい風合いの『どら焼き』が生まれた。近隣の学生たちが気軽に購入できるよう、価格にも配慮する。

無添加・生菓子へのこだわり

無添加にこだわる七里香。当初は、日持ちがしない「朝生菓子」だけを扱ってきたが、手土産に利用したいというニーズに合わせて、多少は日持ちが可能な商品を3割ほど開発した。「多くの店で生菓子を扱う比率は逆かそれ以下で、日持ち可能な和菓子の方が主流です。でも、だからこそ私たちは生菓子にこだわりたいのです」。

そんな七里香の商品開発を手掛けるのは、老舗の和菓子屋をはじめ国際線ファーストクラスへの上生菓子からコンビニ商品まで、幅広く和菓子の開発に携わってきた経験を持つ中川喜博さん。ライフワークとして、新しい飾り菓子の提案「羊羹アート」の発信を行うなど、アーティストとしての一面も持つ。中川さんが創出する独創的で見惚れるような生菓子の数々は、改めて和菓子の魅力に気付かせてくれる。

楽しみ方のスタイルも提案

新しさは、味や見た目だけではない。七里香は、楽しみ方の提案にも積極的だ。縦型の小ぶりな容器に入った『みたらし団子』は、子どもでも食べやすく、食べ歩きや友達とのシェアもしやすい便利な形状。また、幅広い層にリピートされている『干し羊羹』もそのひとつ。本練り羊羹をキューブ状にカットして乾燥させたもので、スタイリッシュで洋酒やエスプレッソにもよく合う。和や洋の枠を超えて楽しめる、そんな自由なスタイルも今風だ。

「時代に合わせるといっても、本質の部分は変わりません。以前なら家族で切り分けて食べることが多かった羊羹も、現代はオフィスや仲間内で分けやすい個包装タイプが人気なように、美味しくさえあればライフスタイルに合わせることで愛され続けるでしょう」と石川さん。新しくていつも美味しい和菓子を。一貫したテーマがそこにあった。

つなぐのは美しい日本の文化

本店の店内にはちょっとしたカフェスペースが設けられており、お茶とともに和菓子や季節の甘味を楽しむことができる。ご近所さんが、気軽に立ち寄りひと息つける場所。商業施設のなかではなく、街とともにあることが、七里香のもうひとつのこだわりだ。

「人口減少や後継者不足から、“街の和菓子屋”は減る一方にあります。和菓子は、祭事に華を添え、“お彼岸にはおはぎ”というように季節を伝えるものでもありますが、それを担うのが街の和菓子屋の役目ですから」。四季の移ろいや節目の行事を大切にする日本文化の美しさを、和菓子とともに未来につなぎたい。七里香は、伝統に新たな風を吹き込み続ける。

和菓子nanarica~七里香~ 早稲田大学前店(本店)
〒162-0041 東京都新宿区早稲田鶴巻町111
03-6233-8477
10:00~18:00
水曜日

https://nanarica.shopinfo.jp/

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