戦後、まだ日本中が疲弊しきっていた頃。創業者である田口栄一が持ち前の器用さを活かし、なんとか手に入れた粉と砂糖で作った栗まんじゅうで人々を笑顔にしたことが始まりだった。
昭和30年、千住の地に喜田家は誕生。以来、人々に“喜び”を提供しようという誓いは、より確固たるものとして喜田家に受け継がれている。
千住を歩けば「どらやきといえば喜田家だよね」そんな声が聞こえてくる。職人衆が紡ぐ、喜田家の証とは―
常に進化し続ける喜田家のどらやき
変わらない、だが同じところに留まらないのが喜田家の代名詞ともいえる「どらやき」だ。
それ故に、種類は多彩。創業時から愛され続ける、しっとりとした食感が特徴の“小倉”のどらやきや、極限まで柔らかくふっくらと焼き上げた“黒糖どらやき六人衆”をはじめ、“栗”や“りんご”、コクのある“あんバター”などバリエーション豊富に展開する。いずれも皮と餡のバランスに徹底してこだわり、現在、皮の種類だけでも4種。店舗限定の商品もあるほか、新たな開発など常に現在進行形なので、どんな出会いがあるかを楽しみに店を訪れるのも一興だ。
喜びを生むには職人の喜びがあってこそ
「お客様に喜んでいただくのはもちろんですが、それには、作り手側の“喜び”があってこそというのが、先代の考え。そのため喜田家には、職人が向上心を満たせる環境が整っています」と語る、職人で次期当主でもある中西浩樹さん。喜田家の自慢は卓越した菓子職人が多数在籍し、互いに切磋琢磨しながら技術の向上に励んでいることにある。現在12名いる全職人が、全国和菓子協会が認定する優秀和菓子職を目指すのはもちろん、様々な品評会に挑んで経験を重ねながら、一流の“喜び”をお届けすべく菓子と向き合う。その表現のひとつとして生まれたのが、「喜田家 六人衆」という和菓子ブランドだ。
技と想いを更新させる独自の取り組み
そんな職人たちの技を体感するなら、「おついたち」がいいだろう。お朔日(ついたち)とは、かつて商家が、おついたちを無事迎えられたという喜びと、これからのひと月を息災で過ごせるよう願いを込めて、月初めに神社に参拝したという習わしだ。
喜田家の職人たちはこれに倣い、毎月交代で、和菓子を通して皆さまの健康と幸せを祈り、四季の慶びをお届けする。「自分の番が回ってくると、昼夜そのことで頭がいっぱいになり大変ではありますが(笑)、このような取り組みを通して、我々は常に新たなセンスを取り入れ技術を磨くのと同時に、皆さまに喜びを提供したいという想いを新たにしているのです(中西さん)」。(※販売は、毎月のおついたちの日とその前日限り)
和菓子は季節の喜びを伝える手段
喜田家が目指す喜びの提供は、お客様はもちろんのこと原材料の生産者や業者も含め、和菓子に携わるすべての方々が対象だ。「皆で守り育むことで、安心・安全な原材料を確保し、良質な菓子を作り続けられますから」と中西さん。全国で活躍する、喜田家から巣立った和菓子職人たちと共に、喜びの連鎖を次世代につなぎたいと夢を描く。
また直接自身も店舗に立つなど、直接お客様と接する機会も多い企画部の塚本明子さんは、「桜を愛でながら桜餅を、夏越の祓に水無月をというように、和菓子は、移ろう季節を伝える手段のひとつでもあります。地域の和菓子店が、日本の美しく豊かな伝統文化を伝える大切な場所であり続けることを願っています」と想いを語る。
季節の和菓子が多彩なのも、喜田家の自慢。日々の暮らしのなかに、ほんのり甘い“喜び”を感じたい。
千住宿 喜田家 龍田町本店
〒120-0042 東京都足立区千住龍田町19-6
03-3882-4147
月・水・木・金・土曜 10:00~17:00 日曜 10:00~15:00
火曜日(当面の間) 元日※1月2日、3日、4日営業時間短縮。