旅人の心を癒やす甘味茶屋 人を笑顔にし、記憶に残るひと皿を

文の助茶屋

京都・東山。多くの歴史的観光名所が存在し、昔も今も、国内外からの観光客で賑わうエリアだ。古都の風情漂う石畳のゆるやかな坂道をのぼり、八坂の塔(法観寺)を背後に望む場所に、落語家が創業した一風変わった茶屋がある。

京甘味 文の助茶屋(きょうかんみ ぶんのすけぢゃや)。「粋なお客様が無粋な店を育ててくださる」という噺家ならではの精神を受け継ぎ、こだわりの甘味で旅人たちの疲れを癒やす―

落語家が創業。参詣客を癒やす甘味処

明治42年、人情噺を得意とし、甘党だった落語家二代目・桂文之助が、引退後に高台寺のそばに甘酒茶屋を開いたのが「文の助茶屋」のはじまりだった。八坂神社と清水寺の間に位置し多くの参詣客で賑わうエリアとあって、甘酒茶屋は、連日癒やしを求める客で大賑わい。やがて、甘酒と一緒に提供しやすい名物「わらびもち」が誕生した。

約30年前に、八坂の塔を見上げる八坂上町に場所を変え、和風カフェとして展開。名物のわらびもちと甘酒をはじめ、夏場はかき氷、冬場は焼きたてのみたらし団子やぜんざいなどを提供する。

文の助茶屋といえばわらびもち

看板商品でもある「本生わらびもち」のこだわりは、なんといっても南九州産の本わらび粉と、讃岐産の和三盆糖を使用していることだ。本わらび粉で作ったわらびもちは、力強い粘りがありながらも、口に入れるととろけるようなまろやかさとコシのある食感を味わえる。「本わらび粉は、採取した蕨の根から5%程度しか採れない大変希少なもので、“黒い宝石”とも言われています」と語るのは、実際に鹿児島に足を運び、採取の現場からその貴重さを実感したという、製造営業部部長の柊 佑さん。

一般的に広く使われている、海外産やサツマイモのデンプンを代用したわらび餅との違いを知ってほしい。そして、できたてならではの風味と食感を味わってほしいという思いから、催事の際にはその場で本わらび粉を火にかけ、作りたてを提供。今まで味わったことのない食感や味わいに歓喜するお客様の顔を見るのが、柊さんにとってのなによりの喜びだ。

京の甘味処をおうちにも

自宅でも美味しく楽しめるよう、おみやげ用の商品も多彩。本わらび粉と和三盆糖を堪能できる「好日」シリーズや、わらび餅やあんみつぜんざい、おしるこなどを手軽にいただける「おうち甘味」シリーズが特に人気を集めている。

約5年前に、ロゴマークやパッケージを一新。随所にある三角形のデザインは、わらびもちがモチーフだ。「パッケージのようにカットすると、食べやすくてプルプル感も楽しめますよ」と説明するのは、製造営業部の山田倫太朗さん。「文の助茶屋は、もとは落語家が始めた茶屋です。“笑いの心を提供する”ことが大前提。ただ美味しいだけではなく、ご自宅にもちょっとした楽しさをお届けできればと、中の栞には五代目・山田裕久の遊び心も」。実は倫太朗さんは、次期六代目。職人としての腕とともに、寄席に通って「文の助」には欠かせない笑いのセンスも修業中だ。

幸せな思い出とともに、記憶に残る味

子どもの頃に修学旅行で購入した思い出から、大人になって再訪したという方は多いという。また、「高齢で出歩くのが困難になった母親が、『むかし、家族で清水寺に行った時に食べたわらびもちが食べたい』と言うので買いにきました」というお客様も。

人を笑顔にし、幸せな思い出とともに人の記憶に残る味。それこそが“文の助の技”の真髄だ。

「五代目・裕久が掲げるテーマは、『お菓子で世界平和』なんです。でっかいでしょ (笑) ? お菓子で笑顔になれる国に戦争はない。私たちはそう信じて、これからも人を笑顔にし“平和の和が広がる和菓子”を作り続けます(倫太朗さん)」。

文の助茶屋 京都本店
〒605-0827 京都市東山区下河原通東入八坂上町373
075-561-1972
11:00~17:00
不定休

https://ecstore.bunnosuke.jp/

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