Vol.6 和菓子でめぐる季節

歳時記

和菓子とお茶の深い関係を辿る

「夏も近づく八十八夜」——。立春から数えて88日、つまり5月上旬は新茶の時期。和菓子の世界でもお茶を使ったお菓子が揃い、美しい緑色が店頭を彩ります。和菓子とお茶といえば泣く子も黙るベストコンビですが、その深い関係を知ってから味わえば、おいしさもひとしお。心行くまで新茶の季節を楽しみましょう。

緑茶ごとにさまざまな味わいが

その年最初の新芽で作られるお茶が新茶、つまり一番茶。フレッシュな風味は初夏のこの時期しか味わえません。お茶と聞いて想像するのは鮮やかな緑の水色の緑茶ですが、緑茶とは摘んだ葉をすぐ加熱し、酵素の働きを止めて仕上げる“不発酵茶”のこと。なかでも一番茶を加工して作られるのが、高級茶として有名な玉露です。玉露の特徴はまろやかな旨みと青みのある香り。その風味を最大限に味わうため、合わせるお菓子はくせのないものがよいでしょう。そして、日本で一番飲まれている緑茶が、渋み、苦み、甘みのバランスの良い煎茶。どんな和菓子とも相性良く楽しめますが、すがすがしい香りを邪魔しないよう、香りの強過ぎないものがおすすめです。

茶の湯と共に発展してきた和菓子

もうひとつ、人気の高いお茶に抹茶があります。日光を遮って栽培した茶葉から緑茶を作り、粉末にしたものが抹茶。元々は茶の湯、つまり茶道で用いられるのは誰もが知るところですが、茶道と切っても切れない関係なのが和菓子です。お菓子が茶席に不可欠なものとして広まったのは、武家の間で茶の湯文化が花開いた室町時代。ですが、当時の“お茶請け”は焼き栗などの素朴なものでした。江戸時代に、茶の湯は町人にも広がり多くの流派が誕生。砂糖の生産拡大や粉・寒天といった新素材の登場によりさまざまな製法が確立し、季節感を取り入れ、デザイン性を高めた和菓子が茶席を通して広まりました。和菓子は、茶の湯のもてなしの心と共に発展していったのです。

お茶と和菓子に感じる茶の湯の心

茶の湯では、和菓子は「主菓子(おもがし)」と「干菓子」に分けられます。主菓子は季節感を表現した上生菓子や、大福や饅頭など日持ちのしないお菓子のこと。通常の倍の量の抹茶でたてた濃茶に合わせます。干菓子は落雁や煎餅といった乾いたお菓子で、薄茶に合わせます。

これらの洗練された茶道用和菓子は、飴や餅、団子など、庶民に愛されてきたカジュアルな菓子とはまた別物。その両方を日常的に楽しめる現代は、和菓子好きにとって幸せな時代といえますね。敷居が高いイメージのある茶道ですが、その本質は“思いやる心”や“受け入れる心”。自宅でお茶を淹れ、お気に入りの和菓子を食べる。そんなひとときに、茶道の心を感じてみてはどうでしょう。

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