Vol.16 今も昔も花より団子! 東西桜餅物語

歳時記

ほころぶ桜の花に心浮きたつ春。淡いピンクと新緑の共演に、思わず桜餅を連想する甘党の方も多いはず。桜餅といえば、クレープ状の皮を使った関東風と、道明寺粉製の餅で包んだ関西風があり、「どっち派?」の熱い論争が起こることもしばしば。東西それぞれの歴史を辿りながら、その人気の理由を探ります。

年間38万余⁉ お江戸の大ヒット商品

お花見が大好きな日本人。平安時代には既に桜を愛でながら菓子を食べる風習がありましたが、“桜餅”という菓子の誕生はもっと後の江戸時代とされています。きっかけは八代将軍吉宗による「享保の改革」。庶民の憩いの場として、江戸の各地に桜を植樹したことがお花見の原点として有名ですが、享保2年(1717年)、隅田川に近い長命寺の門番が桜の落ち葉を掃除するうちに思いついたのが、塩漬けの桜葉で餡入りの餅を巻く桜餅だと伝えられています。門前で売り出すと、たちまち大評判に! その100年ほど後、かの滝沢馬琴らが手掛けた随筆集には、この桜餅が年間38万以上売れたと記されているほどです。浮世絵や詩文にもたびたび登場するなど、当時の絶大な人気が伺えます。

後発ながら全国に広まった関西風桜餅

江戸の桜餅人気はやがて全国へ。明治になって広まったのが道明寺粉を使った関西風桜餅です。道明寺粉とは大阪・藤井寺の道明寺を発祥とするもので、モチモチ感が特徴。京都を中心とする関西圏では、椿の葉を使った「椿餅」をはじめこの道明寺粉を使用した和菓子が古くから親しまれており、その派生系として生まれたと考えられます。発祥には諸説ありますが、小麦粉などを水で溶いて焼き上げたなめらかな「関東風桜餅」に対し、もち米を砕いた道明寺粉を蒸して作る「関西風桜餅」は、粒感を残した独特の食感が人気。大手スーパーやコンビニでも春の定番スイーツとして売られ、今や全国的な知名度を誇ります。

塩漬けの葉に隠された特別な効果とは


さて、桜餅の一番の特徴と言えば唯一無二ともいえる独特な香り。実はあの強い香りは、生の桜の葉にはありません。塩に漬けることで葉の中の一部の酵素が働き、クマリンという芳香成分が生成されることで生まれるのです。塩漬けの葉の利点は香りだけに止まらず、防腐・殺菌効果や餅の乾燥を防ぐ保湿効果も。さらに“葉も食べる派”の人からすれば、あの塩味が甘さを引き立て、絶妙な味のバランスを生み出すことは百も承知のはずですよね。昔ながらの白色の桜餅を提供する店もありますが、現代は食紅などでピンクにしたかわいらしい色合いのものが主流に。香り、味、見た目から季節を堪能できる奥深さこそ、桜餅の人気の理由といえるかもしれません。

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