新年の福を招く縁起菓子あれこれ

歳時記

歳神さまをお迎えし、一年の無事と幸福を願うお正月。おせちやお雑煮といった特別な料理を食べるのと同じように、和菓子にもお正月に食べるからこそ意味がある“縁起もの”がたくさん登場します。かわいらしい造形に健康長寿や子孫繁栄の願いを込めた縁起菓子の数々をご紹介しましょう。

力強く咲き誇る可憐な“春告げ草”を象って

お正月になると目立つのが梅の花を象った和菓子。寒さの厳しい時期にいち早く花を咲かせる梅は“春告げ草”ともいわれ、強さや希望を感じさせる開運の象徴とされてきました。有名なのは、ぷっくり満開の梅を象った「福梅」。水飴を練り込んだつぶ餡を紅白の最中で挟んだ和菓子で、江戸時代、梅の家紋で知られる加賀藩前田家の新春の茶会で供され広まったといわれます。上生菓子の定番「未開紅」は、梅のつぼみが今まさに開こうとする様子を表したもの。白に薄い紅色を重ねた色合いは、十二単などに用いられる“かさね色目”と呼ばれる日本古来の配色。ほっと寒さがやわらぐようなあたたかみや、自然の生命力が伝わる美しい和菓子です。

見て楽しい、食べて楽しい各地の縁起菓子

縁起のよいモチーフがちりばめられるお正月の和菓子。「松」「竹」「梅」や「鶴」「亀」といった定番のほか、一年の福徳を司る歳神さまは元日の日の出とともにやってくるとされるため、「初日の出」のデザインもよく使われます。山形・庄内地方には、なんと初夢に見ると縁起がよいとされるナスを砂糖漬けにした「初なすび」という縁起菓子が。ユニークな仕掛けが目を引くのが、加賀・金沢の伝統的な正月菓子「辻占」と「福徳」。「辻占」は最中や餅粉製の生地の中に占いが書かれた紙片が、「福徳」は打ち出の小槌や米俵型の最中の中に招き猫や鯛を模した砂糖菓子や人形が入ったもの。家族が集まるお正月に和菓子を囲み、運試しで盛り上がるのも一興かも!

笑顔こぼれる愛らしい和菓子で幸せに

カラフルでにぎやかな正月菓子に混ざり、てっぺんにぽつりと一点だけ紅色がさされたシンプルな薯蕷(じょうよ)まんじゅうを見かけたら、それが「えがお饅頭」。別名「えくぼ饅頭」ともいい、お正月のほか、結婚式などの祝いごとの贈答品としても用いられる和菓子です。なんともかわいらしい名前は、赤い点の愛らしさに由来するそう。昔はまんじゅうを食べやすくするため表面を十字に割ることがあり、てっぺんに赤い点を打つのはその名残なのだとか。中には上品なこし餡がたっぷり詰まり、そのおいしさに文字通り笑顔がこぼれます。「笑う門には福来る」——。縁起菓子をいただき、新しい年にたくさんの福を呼び込んでみてはいかがでしょう。

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