
12月後半、年の瀬を感じる頃に迎えるのが二十四節気の「冬至」。一年のなかでもっとも昼間が短く、夜が長くなるこの日には、無病息災を祈るさまざまな風習があります。柚子湯に入るのはなぜ? どうしてかぼちゃを食べるの? その由来を考えながら、おいしい和菓子でひと息ついてみませんか?
旬の柚子からいきいきとした力をもらう
冬至といえば思い浮かぶものに「柚子湯」があります。柚子は古くから神事に使われる日本人に馴染み深い柑橘。冬でも青々と茂る葉や明るい黄色、強い香りが生命力の象徴とされ、邪気払いに多用されてきました。その柚子を入れた湯に浸かって身を清め、病を防ぐという風習の始まりは、街なかに銭湯が誕生した江戸時代。「冬至」を「湯治」、「柚子」を「融通がきく」にかけて広まったという江戸っ子らしいエピソードが残っています。そんなシャレはさておき、この頃ちょうど旬を迎える柚子は香りも栄養も抜群。和菓子業界でも、老舗から新店までさまざまな柚子菓子が並ぶ冬至は、柚子をおいしく味わうのに最適な時期でもあるのです。
ダブルの「ん」で運気も倍増?

冬至には運を呼び込むため「ん」が付く食材を食べるというのは有名な話。スーパーなどではこれにあやかり、れんこん、にんじん、うどんなどが売られますが、なかでも人気なのがなんきん、つまりかぼちゃです。実はかぼちゃの旬は夏から秋。ただし長期保存が可能ゆえ、昔は冬場の貴重な栄養源として重宝されました。柚子同様、鮮やかな色合いに力があるとされ、健康と魔除けを願うにはもってこいの食材だったのです。「冬至にかぼちゃ」が広まったのは明治以降で、比較的新しい風習なのだそう。そしてかぼちゃは、和菓子との相性もばっちり。かぼちゃ餡のまんじゅうやかぼちゃを象った練り切りなど、ほっこり幸せなおいしさで運気もアップしそうです。
“始まり”の日においしくゲン担ぎ

電気の通っていない昔、夕方にもなればすぐに辺りが闇に包まれる冬至は、さぞやさみしく、寒さが身に染みる日だったことでしょう。一方で、もっとも弱まっている太陽の力がこの日を境に再び甦ることから、悪いことが続いた後で幸運に向かう「一陽来復」、つまり「陰」が「陽」に転じるおめでたい日ともされました。不思議なことに、冬至を境に新しい年が始まるという考え方は、世界各地に存在するのだとか。“始まり”を象徴する日に、昔の人が縁起を担いださまざまな風習を取り入れたのもうなずけます。現代でも、この時期は気力と体力が落ちやすいもの。温かいお風呂や料理に加えて、柚子やかぼちゃの甘い和菓子をいただき、英気を養うのもおすすめです。
コメント