日本の文明開化の象徴であり、伝統と格式を携え常に時代の先端をいく街、東京・銀座。なかでも老舗の料理店やBar、高級クラブなどが集中し、夜の繁華街として知られるのが銀座八丁目だ。
創業70年以上。銀座に店を構えて以来、甘納豆専門店・銀座鈴屋は上質を知る大人の手土産として長く愛され続けてきた。「子どもの頃、よくおばあちゃんと買いに来た」というファン3代目も多い、鈴屋の甘納豆。銀座の看板を背負い、常に時代の先を読みながらも変わらぬ矜持とは―
銀座の老舗で愛され続ける味
甘納豆一筋に、職人が、ひと粒ひと粒の状態を見極めながら素材の風味や食感、色合いを存分に生かして仕上げる甘納豆。作業は機械化ができず肌感覚が命という、まさに手づくりの極みだ。そんな一級の味は、“本物”を求める人々に長く愛され続けてきた。
「甘納豆はお茶にはもちろん、グラッセのようにあらゆるお酒にも合います。銀座の老舗Barや高級クラブで、チャームや手土産としても長くご利用いただいています」と語るのは、3代目社長・小木曽太郎さん。ほかにもホテルの高級ルームのウェルカムスイーツとして、また料亭の水菓子にも使われるなど、さまざまなシーンで特別なひとときを演出してきた。近年は食育や安全・健康といった意識の高まりから、新たな層からの関心を集めている。
贈り物に宝石箱のような感動を
「銀座鈴屋」創業以前は、「鈴屋甘納豆」として渋谷で製造・販売をしていた同店。戦後間もない当時は菓子といえば甘納豆で、国内には数百という専門店があったそうだ。「その頃の甘納豆は、いつも食卓にあるミカンのような存在でした。日本が豊かになり贈り物文化が根付くと読んだ創業者が、贈答品に特化し、場所も時代の先端を行く銀座に移転したのが始まりです。現代風にいえば“ブランド化”ですね」。
贈られて喜ばれるよう、特製の木箱を用意。掛紙には版画家・棟方志功氏の絵を。そして書家で篆刻家である石居雙石氏より授かった「甘露降」の文字を商標とし、銀座鈴屋の礎が形づくられた。「ご縁あって当店の豆菓子を賞してくださった両巨匠に恥じないよう、いつも身が引き締まる思いです」。さらに社員や小木曽さんのアイデアで、縁起の良い六角亀甲形の容器に6種を詰めた『華やぎ』が完成。宝石箱のような華やかさで、特別な日の贈り物にふさわしい逸品だ。
わずか7%という選り抜きの栗
国産原材料不足が課題とされている昨今、質にこだわる多くの和菓子屋では、その確保だけでなく生産の部分までさまざまな努力を重ねている。そのなかでも皮剥きからカットまですべて熟練の手が必要な「栗」は、特に深刻だという。特定の場所で実った良質な栗を収穫し、さらに銀座鈴屋の規格にあったサイズ・形状だけを選り抜き代表銘菓『栗甘納糖』になるのは、なんと穫れた量の重さのわずか7%。気が遠くなるような物語を秘めたひと粒だけが、お客様のもとに提供される。
「たとえ時代が変わっても、変らないのは手作りへのこだわりです。作業を簡略化しようと思えばできる部分もありますが、うちではあり得ない。“心を込めて”という創業者の理念は、これからも変わりません」。
ライフスタイルに合った新たな形
半生菓子である甘納豆は日が経つと風味や食感、色味が落ちてしまうため、包装部分を改良。商品や時期にもよるが、2週間から個包装タイプで90日間、美味しく楽しむことができる。2012年に登場した豆のグラッセ『銀座六花』シリーズは、豆を花に見立てた美しいパッケージと手軽さで、“甘納豆”を知らない世代にも大ヒット。
朝はヨーグルトやシリアルと混ぜて、おやつには紅茶を飲みながら、夜はシャンパンと、というように「美味しさはもちろん体にいいものだからこそ、ライフスタイルに合わせて手軽に楽しんで頂きたい」と、銀座鈴屋は時代に合ったスタイルを提案し続ける。
銀座鈴屋 銀座本店
〒104-0061 東京都中央区銀座8丁目4-4
0120-141-710
10:00~19:00
土曜日